相続したアパートの賃料収入、誰のモノ?

賃貸不動産のオーナーが亡くなった場合、遺言があるケースや遺産分割協議が成立した後については、賃貸物件を承継した者が”当然に”その賃料収入を取得することになります。

では、遺言がないケースで遺産分割協議が成立するまでの間、その賃料収入は相続人間でどのように分けるべきなのでしょうか。

本件に関しては注意が必要な判例があります。今回はその判例についてのお話です。

遺産分割協議が成立するまでに発生した賃料収入の取得に関する判例

遺産分割成立時までに発生した賃料収入について誰が取得することになるのかに関しては、長らく裁判所においても考え方が分かれていたところでしたが、2005年(平成17年)に最高裁判所が以下のような判断を下しました。

まず、相続発生から遺産分割までの間、遺産は共同相続人全員の共有であるという相続の基本原則を確認したうえで、相続発生から遺産分割までの間に生じた賃料債権は、相続財産とは別個の相続人全員の共有財産であると判断しました。

次に、相続人が相続分に応じて取得した上記賃料債権は、後になされた遺産分割協議の遡及効による影響は受けないと結論付けました。

相続の基本ルールは遡及効だが・・・

相続の基本ルールとして、『遺産分割は、相続開始の時に遡って効力が生じる』という定めがあります(民法909条本文)。
そのため、遺産分割協議の結果、賃貸物件を承継した者が上記賃料債権も得るのではないかという疑問が生じます。

しかし、最高裁は、自分のものだと思って賃料収入を費消したにもかかわらず、「遺産分割協議により他の相続人のものとなったので、返すように」というのは不条理だと判断したのでしょう。

なお、遺産分割協議の中で協議成立までの賃料債権の取得者を決めることも可能であると考えられています。

円満な資産承継のために

いかがでしたか。このように、相続では一般の方には把握しきれない内容も多くあります。

専門家に相談することをおすすめします。

千葉市美浜区 行政書士キズナ法務事務所《絆コンサルティング》