認知症になったら困る、お金のこと
人生100年時代の新たな問題「認知症」
現在、日本人の平均寿命は、男性81歳・女性87歳、
これに対し、健康寿命は、男性71歳・女性75歳と言われ、
平均介護期間は、約10年と言われています。
また2025年には、65歳以上の高齢者の5人に1人は認知症
を発症する可能性があるというデータも出ており、
単純に寿命が延びたと喜んでもいられない事態となっています。
認知症になったら、できなくなること
できなくなることの例
- 不動産の処分
- 銀行での手続き
- 遺言書作成
- 生前の贈与
特に1と2は、『認知症になると資産が凍結される』と言われる所以です。
「暗証番号を知っているし、キャッシュカードでおろすから大丈夫」という方もいますが、本来は違法です。
認知症高齢者の保有する凍結金融資産は150兆円とも言われております。
寿命が短かった時代には考えられなかった、
平均10年の資産凍結期間が現出しているのです。
深刻に受け止められない理由 未成年の子供との違い
同じ家族ですが、認知症の親と、未成年の子供に対するのでは大きく違います。未成年の子供の場合には、自動的に親権者となり、財産管理や代理をすることができます。
一方、認知症の親の場合は、法定の成年後見制度を利用するか、事前に任意後見契約を結ばなければなりません。いずれにしても家庭裁判所に申立てを行わなければなりません。
自動的に認知症の親の代理をすることはできないのです。
困ること① 成年後見はお金がかかる
認知症になった場合、家庭裁判所に申し立て、成年後見人をつけるしかありませんが、手続きに時間がかかりますし、家族が必ずしも後見人になれる訳ではありません。
一昨年の実績ですと、成年後見人の約74%が第三者となっています。
かつ、第三者の場合、月に数万円の報酬が発生します。
困ること② 子や孫の為にお金を使うことができない
後見人は家庭裁判所の監督下にあり、原則、本人の為にお金を使うことしかできません。
人(=家庭裁判所)にお伺いを立てなければいけない、のみならず、
かわいい子や孫の為にお金を使うこともできなくなるのです。
また、財産の管理維持を第一にしますので、この低金利の時代に資産運用もできなくなります。
困ること③ 後見人が一度ついたら、一生涯続く
例えば、認知症の奥様を残して、ご主人が他界された場合、
奥様がお子さんと遺産分割協議をするにあたっては、成年後見人(および特別代理人)をつける必要が出てきます。
このように、一つの行為をする為だけに後見人を付けた場合でも、後見は一生涯続きますので、第三者の場合には報酬も一生涯発生してしまいます。
対策 『困らない為に』
認知症になる前、心身ともに元気なうちに、対策を取っておく必要があります。
対策例
以下は、その対策例と簡単な長短所のコメントです。
- 公正証書遺言(法律上有効な遺言があれば、遺産分割協議は不要となります)
- 家族信託契約(家庭裁判所の管理下にも入らず、困ることをほぼ全てカバーできますが、高度の専門性を要します)
- 任意後見契約(後見人が第三者となることを防げますが、監督人選任の申立てをしなければなりません)
いずれも行政書士や弁護士といった士業に相談すると対策が可能です。
ただし、士業の方でも専門分野があるため、相談の際は
相続や不動産の経験があるか確認の上、相談することをおすすめします。
キズナ法務事務所